教案で未習語がないか確認する

 教案を書く際には、教師の質問に対して学生がどう答えるかをあらかじめ予測して教案に書いておくこと、教師が教えるべき文型を使って質問しただけで安心せず、学生の答えにその文型が含まれているかどうかを確認しておくことが大切です。

 教案を書く上で、もう1つ気をつけることがあります。これは直接法で授業をする上で最も大切なことなのですが、教師が話す言葉の中に、未習の語彙・文型が使われていないかを確認するということです。なぜこれが重要かというと、新しい言葉を説明するときに、説明に使われている言葉がまた新しい言葉だったら、学生はいくら説明を聞いても意味が分からないからです。「複雑」という単語の意味を、「いろいろにからみ合って入り組んでいること」と説明しても、「からみ合う」や「入り組む」の意味を学生が知らなければ説明にならないということです。

 教師が話す言葉を学生の知っている語彙・文型だけに制限して教えることを、「語彙コントロール」と言います。教案をチェックする時は、この語彙コントロールがきちんとできているかどうかの確認作業が不可欠です。

 養成講座の受講生の演習授業を見ていると、未習の語彙・文型を使って教えている(語彙コントロールができていない)ので、外国人学習者が聞いても理解できないだろう、と思うことがよくあります。とは言っても、まだ実際に外国人学生を相手に授業をした経験のない受講生にとっては、自分が書いた教案を見ても、何が未習で何が既習かをすぐに判断することはできないでしょう。

 それでも、できるだけ未習の語彙や文型を使わないようにするには、自分で書いた教案をテキストの索引を見ながらチェックするしかありません。少しでも自信がなければ、面倒がらずに索引を見て、その語が未習か既習かをチェックします(既習語だったら必ず通じるというわけでもないですが)。このような語彙のチェックをするためには、その前提として、教室に入ってから教師が話す言葉、練習で使う単語などが一字一句教案に丁寧に書かれている必要があります。発話予定の言葉がきちんと書かれていれば、それをもとに未習か既習かをあとからチェックすることは可能です。

 しかし、教案に発話内容を詳しく書かないで、「~であることを説明する」とだけ書いている人もいます。本来は「説明」の部分をどんな語彙を使ってどのように教えるのか書いておくべきところなのですが、肝心の教師が話す言葉の内容が書かれていないのです。これでは実際の授業で教師がどのように語彙コントロールをして教えるのかがわかりません。この教案では発話内容が「既習か未習か」をチェックすることができないわけです。語彙コントロールのできた授業をするために、教案には教師の発話内容を丁寧に書いておきましょう。

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